月花2

・・・取り敢えず、出来てる所まであぷ〜。
さ、先は長そうだ・・・(汗)。



前回



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そんなに作業に集中していたか、と漸く後少しで終わるとまでメドがついた作業の手を休めて一息吐く。
気が緩まったのか、今の今迄は感じ無かったのに急に肌寒さを覚えて身震いする。軽く汗もかいたし元々少し寒い位の陽気だったのだ。1枚上に羽織る物を、と少しは考えたが、手元の残り作業を顧みて止めた。



わざわざ自室迄戻る程寒い訳でも無い。



作業も後少しすれば終わるだろうし、そうしたら暖かい飲み物でも飲んで身体を暖めれば良いだろう、そう結論付けて残りの作業に没頭した。
そうして暫くすると漸く全ての作業が終わった。掃除用具を片付けまとめておいたゴミを帝劇裏手に在るゴミ置場まで運ぶ。外へと続く扉を開けると冷たい風が中に吹き込んできた。思っていたよりも空には雲が広がり、吹く風にもだいぶ湿気が混じってきている。



「イヤな天気だな…」



そんな感想が思わず漏れる。



(…皆、暖かい所に居るだろうか)



今、彼女達は慰問で出かけているのだ。まだまだ設備が復興していない場所もかなりある。だが、流石に帝劇スターである彼女達に余りにもひどい様な宿泊施設と云う事は無いだろうが。



本当はもっと気になる事がある。



それは、今だ現場処理に追われている月組だ。
彼等は実質的な処理に当る事が多い。
だから今現在もガレキの山と格闘しながら、現場の復興などに奔走しているだろう。その中にあって士官生時代からの親友、と一言で片付けるには複雑な関係の男は、普段の軽さを潜ませて最前で指揮を取っているに違いない。
それに比べれば、自分は何て云う体たらくだろう。
唯でさえ花組として現場に出る事など稀なのに、折角の活動に自分の具合が悪い所為で参加できないなんて。



…隊長失格だな。





「…はぁぁ〜」



そう思い至って自然と口からは深い溜め息が出てしまう。それにつられる様に落ちてしまう肩に、更につられるのか心なしか身体まで重く感じる。
体調が芳しくないと精神迄弱くなるみたいだ。



イカン、イカン!」



こんな所をあいつに見られたら「らしく無いぞ、大神ぃ〜」なんて笑われるだろう。
いや、何時もの格言癖で「古人曰く、『病は気から』だぞ〜」とか忠告を受けるだろうか。



そうだ、気の持ちようだ。
それこそ、ココで落ち込んでいたってどうにもならない。
今は少しでも皆の為になるように、やれる事をやるだけだ。



「・・・よっし」



少し浮上した気持ちに気を取り直して、ゴミを片付ける。
皆、この空の下で頑張っているんだ。俺も出来る事を頑張ろう。
そんな事を思いつつもう一度空を見上げる。そう考えると、この曇った空模様も別段暗く見えなくなるから不思議だ。